んさんの帰り、遅過ぎますなァ」
「何や? だんさんがおらへんと寂しいのか?」
「いや、聞いて貰いたい話があるのだす」
「何もだんさんやのうても、わたいが聞きましょ、話してみなはれ」
「へえ、それが…」
「だんさんやないと、話されへんのだすか?」
「そんなことはないけど…」
太の態度が煮え切らない。
「こう言うてても、すぐ帰りはるやろ、もう四・五日待ちなはれ」
「それが…」
聞き質してみると、先日大江戸 一家へ塩を納めに行ったとき、貸元の妻お須磨姐さんになにか言われたらしい。
「わいに大江戸一家の養子になって、一家を継いで欲しいと言われました」
「よう養子になれと言われる子やな、奈良屋の後家さんにも言われたのやろ」
「へえ」
「それで…」
「それでって?」
「三太らしくないなァ、三太の気持ちはどうなんや?」
「それが…」